09« 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31.»11

* category: 展覧会

『カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち』展@パナソニック汐留ミュージアム 

2017.10.19
Thu
11:30

 10月17日(火)~12月20日(水)開催の
『表現への情熱 カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち』展(公式ページはこちら
のプレス内覧会に、ブログ・SNS枠で参加しました。関係者のみなさま、ありがとうございました。

 パナソニック汐留ミュージアムはルオー作品を常設展示する一室があり、これまでにもルオーと他の画家を結びつけた展示をしてきたのですが、今回は〔色〕をキーワードに、カンディンスキーと、さらにドイツ表現主義およびクレーが登場します。
〔カンディンスキー〕そして〔色〕というキーワードにとびついて内覧会応募したら、これも好きなドイツ表現主義、クレーの作品も見れて充実でした。作品の写真を何枚かあげてご紹介します。ただし、ルオーは著作権が切れていないため撮影NGとのこと。ぜひ美術館にて!

*以下の写真は、特別な許可を得て撮影したものです。

 展示は三部構成。

・第1章 カンディンスキーとルオーの交差点
 第一室はカンディンスキーとルオーの初期作品に捧げられています。
 カンディンスキーは1866年ロシア生まれ、画家を志して最初に出た外国はドイツ(ミュンヘン)でした。1896年、当時30歳。

 その5歳下、1871年に生まれのルオーはパリ生まれ。最初はステンドグラスの職人見習をしていましたが、やがて、当時モローが校長をしていた国立美術学校に入学します(このふたりの結びつきにひかりを当てた展覧会も、パナソニック汐留ミュージアムで2013年開催→紹介ページ)。



201710_k1.jpg
 ヴァシリー・カンディンスキー<<水門>> 1902年 宮城県美術館

 ルオーとカンディンスキーの「共演」は1904年のサロン・ドートンヌがはじまり(1910年まで出品とのこと)。サロン・ドートンヌはルオーも創設者のひとりで、もちろん出品もしていました。

201710_k2.jpg
 ヴァシリー・カンディンスキー<<商人たちの到着>> 1905年 宮城県美術館
 カンディンスキーが1905年に出品した三作のうちのひとつ。
 1905年、サロン・ドートンヌというと、あの「野獣派」と訳されることがあるフォビーヴィスムFauvismが〔誕生〕した展覧会でもあります。
 
 この部屋に展示されていたルオーの作品のなかでは、<<法廷 >>(1909年)という作品に目を引かれました。全体的に暗いトーンで、近寄らないとどんな光景なのかもわかりにくいのですが、そのなかで判事たちの法衣の赤が鮮やか。というと「法の正義」の力強さが表現されているかのように読めますが……。ぜひ、その場で確かめてみてください。
 
・第2章 色の冒険者たちの共鳴
 配布されたプレス資料から紹介します。

(引用)
 不安や焦りなど個人の精神のありようを色彩や形態に置き換えて表現しようとしたドイツ表現主義の運動は、ドレスデンのグループ「ブリュッケ」を端緒として、ミュンヘンのカンディンスキーが新しく始めた「青騎士」の活動へと緩やかにまとまりながら展開します。彼らは、自然回帰的でプリミティブ(原始文明)な表現や、「今ここ」からは失われた中世や古代などの理想化された光景を表現に取り入れました。彼らと、人間や事物の外見を超えて本質に迫ろうとしたルオーには、背景となる文化を越えた同時代的な親和性が感じられます。
(引用終わり)

 この部屋では、あえてキャプションを作品のすぐ近くには置かず、テーマごとに展示する試みがありました。

201710_h1.jpg
(左から)
・エーリヒ・ヘッケル<<木彫りのある静物>> 1913年 広島県立美術館
・マックス・ペヒシュタイン<<森で>> 1919年 高知県立美術館
・ハインリヒ・カンペンドンク<<少女と白鳥>> 1919年 高知県立美術館

201710_h4.jpg
 ハインリヒ・カンペンドンク<<郊外の農民>> 1918年頃 宮城県美術館
*この絵は別の壁面に展示。
 カンペンドンクは今まで意識したことがなかったのですが、この絵そして上にあげた<<少女と白鳥>>が気に入りました。ちょっと調べてみたら[マルクの動物画に影響を受けた]という記述も見つかり、それで好きなのかな、とも。
<<郊外の農民>>はシャガールが故郷を描いた絵などを想起させるものでしたが、動物のかわいらしさ、単純化された女性の横顔のちょっとした愛嬌に惹かれて細かく見ると、左の馬の背中あたりに謎のにょろんと長い腕(?)が伸びていたり、郊外と言ってももちろん鉄塔があったり、どこか不穏なものも隠れているのが複雑な味でした。 

201710_h2.jpg
 マックス・ペヒシュタイン 版画集『われらの父』より 1921年 宮城県美術館
 聖書や神話世界も展示テーマのひとつ。ペヒシュタインのこの連作はズバリ『われらの父』(つまり神)です。会期中、展示替えがあるそうです。

201710_k3.jpg
(左) ヴァシリー・カンディンスキー<<「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)>> 1914年 宮城県美術館
(右) ガブリエーレ・ミュンター<<抽象的コンポジション>> 1917年 横浜美術館
*この展覧会を通し、「カンディンスキーの表現の展開を語る重要な3作品が登場」(プレスより)するのですが、その二枚目がこれ。一枚目は展覧会のキービジュアルとしてチラシなどにも使われている<<商人たちの到着>>です。隣に置かれた絵の作者、ミュンターはカンディンスキーの恋人。

 第二部のルオー作品では、人物の顔を大きく描いた作品-<<ヒンデンブルク>>、<<自画像>>(左目はかげになり、こちらをぎろりと見ている右目に浮ぶ怯えや絶望)、<<アヌーシュカ>>と、踊る骸骨絵が強く印象に残っています。これらの作品の多くはパリのルオー財団所蔵か、ルオー財団が協力して来日した個人蔵。パリからは約20点の初来日を含む約40点の作品が来日しているそうです(プレスより)。

・第3章 カンディンスキー、クレー、ルオー -それぞれの飛翔


 クレーの作品は第二章にも登場。とくに好きな並びだけここに載せます。 
201710_klkl.jpg
(左) パウル・クレー <<グラジオラスの静物>> 1932年 宮城県美術館
(右)パウル・クレー <<橋の傍らの三軒の家>> 1922年 宮城県美術館

201710_k4.jpg
 ヴァシリー・カンディンスキー <<活気ある安定>> 1937年 宮城県美術館
 そしてカンディンスキーの表現の展開を知るキー、三枚目がこちら。
 上掲の二枚と比べ、色の強度がぜんぜん違う。いまはあまり使われない用語だということですが、こっちが「冷たい」抽象という感じがします。それでもカラフルな魚や音符などがあり、ささやきというか身をのんびり揺するような動きもあり、タイトル<<活気ある安定>>はまさに、と思いました。

 ルオーの作品は最後の部屋にずらっと並びます。<<学者ぶる人>>、<<ウラリー>>など、「顔」を描いたもの、そしてキリストが現れる宗教画など。こちらも、ほとんどがパリから来日した作品が並んでいます。

 また、展覧会の終わりにPhoto and Networkという最新自撮システムも設置されていました。
 展覧会ウェブページから引用します。

 PHOTO AND NETWORK
記念撮影コーナーで、パナソニックとNTTコミュニケーションズが提供するカメラシェアリングサービス「PaN」をご体験いただけます。「PaN」で撮った写真をスマホやパソコンにダウンロードしてお楽しみください。
※システム利用は無料ですが、画像のダウンロードには別途通信費がかかります。

・・・・・展覧会概要・・・・・
開館期間  2017年10月17日(火)~12月20日(水)
開館時間  午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日   水曜日(ただし12/6、13、20は開館)
入館料   一般:1000円、65歳以上:900円、大学生:700円、中・高校生:500円 小学生以下無料 
 20名以上の団体は100円割引。障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料で入館可
主催    パナソニック 汐留ミュージアム、NHK、NHKプロモーション
後援    在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、ドイツ連邦共和国大使館、港区教育委員会
特別協力 ジョルジュ・ルオー財団
協力    日本航空


 
スポンサーサイト
Comment(0) | Trackback(0) |  * 記事編集 *  go page top

* category: 展覧会

アートツーリスト in New York・1 

2017.09.12
Tue
16:51

 とりあえず、今年の遠征はこれでおしまい。のつもりでニューヨークに行ってきました。
 ニューヨークはたぶん5回目。ただし最後に行ったのが1998年ぐらいで、その後もどんどん変わったはずの街や美術館を見て歩きたいとずっと思っていました。2010年にブリュッセル&パリに一緒に行った友人たちと、「次はニューヨーク」って話してたのですが、仕事や健康の関係でちょっと難しいということだったので、ひとりでも行くかなあと思っていたところ、ニューヨーク在住のお姉さまに会いに行くという別の友人が誘ってくれたことから実現しました。ありがとう。

 9月1日に成田を出、7日には帰国。というわけで、実質4日間の旅でした。ホテルの部屋&朝御飯は一緒だけど、あとは原則として別行動です(ジャズ→夕食、チェルシー地区→夕食は一緒だったので、全体の3分の1ぐらいj同行だったかな)。

 毎日のことを細かく書いてると絶対終わらない(スペインのもざっとしか書けてないし、アイルランドは中断してるし)ので、ここはもう腹を決め、今回の目的だった美術館めぐり(本当はギャラリーも行ってみたかったけど時間切れ)についてだけ、いつかまた再訪するときのために残しておこうと思います。

・役にたったよその1 メトロポリタン美術館のメンバーになった。
 メトロポリタン美術館の入場料は「自分で考えて払ってね」なのですが、一般への推奨は25ドル。
 メンバーのステータスはいろいろあるのですが、一番安いのが一年100ドルです。これに遠隔地在住割引で、日本から申し込むなら80ドルになります。三つ(5th Avenue、クロイスターCloisters、ブロイヤーBreuer)に有効で、いつでも入場できるし同伴1名OK。などの特典があります。→詳しくは、公式サイトのこのページを参照。日本語でのニュース記事も参考になると思います。入会するとカードが送られてくるそうですが(届く前に出国&帰国しちゃった)、受付けましたよ! のメールを印刷して見せればOK。

 今回入ってみたのは、
・5th Avenueだけでもくブロイヤーにも行く予定。5thは何回かに分けるつもりもある。
・たぶん友人も同伴で行く。
・入場するのに長い列ができることがあるらしいけど、メンバーならメンバーデスクに行けばいいしそこはすぐ発券してくれるという話。
という理由がありました。

 結局5thに3回、ブロイヤーに1回行ったので(友人は体調の関係で同行しませんでした)ざっと見積もって100ドル。80ドルで済んだのはラッキーでした。
 メンバー特典で割引になるグッズもあったけど結局買わなかった。
 それから、「早く入れる」の件ですが、朝イチ開館前に行くとどうせ他のひとと一緒に並ばなくてはならなかったので、そこは解決せず。でもすこしだけずらせば、すっと入ってメンバーズデスク→入場で、中に入ってからまた行列の手間はありませんでした。

・ 役にたったよその2 MOMAの早朝ツアー
 こちらは1と比べると意見の分かれるところかなあ。でも個人的には満足。
 4日間でいろいろ見たいので、早く入場できる(その後も残って個人的に見てOK)というのがとくに魅力的でした。
 MOMA主催ではなく、tripAdvisorが運営するViatorという観光サイトで見つけました。→Viator VIP : Mornings at MOMA
 9時30分から1時間、定員25名のガイドつきツアーで、 今のところ土・日開催です。

 内容も面白かったんだけど、寒い雨の日だったにも関わらず、10時30分に開館したとたんにすごい混雑になったため、わあーツアー正解! と思いました。ニューヨークの「夏」の終わりの連休(9月4日(月)はLabor Day)中日だからこの混雑だったとも言えるし、いまMOMAが拡張工事中で手狭なのもあるかもしれません。
 
moma独占
*第一室では解説後5分程度の自由時間あり。MOMAで一番人気?のゴッホ〔星月夜〕の前もこんな感じ。

IMG_2691.jpg
*第二室はピカソ〔アヴィニョンの娘たち〕をはじめとするキュビスムの部屋。
 MOMAの「門外不出の一枚」はこの〔アヴィニョンの娘たち〕だそうです。けれども間近で質感まで見られるように、カバーのない状態にしてあるそうです。サイズ(243.9 x 233.7)についても注意喚起があったので、われらがガイドMidoriさん(日本人! 聞きやすかった)にもちょっとだけご出演いただきます。

MOMAひる
*収蔵品展示第一室だからというのもあるだろうけど、開館1時間後ぐらいにはこんな感じ。写真OKなのもあいまって、正面でゆっくり見るなんてできないよね。

momaひる1
*昼過ぎには雨はあがってましたが、チケット購入にはかなりの行列が。
 チケット売り場や展示室のサイズと比して今回一番混んでたのが日曜日のMOMAでした。
Comment(0) | Trackback(0) |  * 記事編集 *  go page top

* category: 展覧会

『ファッションとアート 麗しき東西交流』@横浜美術館 内覧会に行ってきました 

2017.04.27
Thu
15:18

 横浜美術館で6月25日まで開催中の『ファッションとアート 麗しき東西交流』展(公式サイトはこちら)で開催されたミニ内覧会に参加してきました。夕刻に集合、別室ですこし展覧会の意図やこぼれ話をうかがってから、イヤホンガイドを手に(耳に?)担当学芸員さんについて展示室をまずまわります。そして閉館後には部屋ごとに区切って自由鑑賞および撮影(一部NGあり)タイムに。
 関係者のみなさま、すばらしい機会を与えてくださりありがとうございました!

IMG_0609.jpg
*展覧会カタログ。
 チラシよりも英語タイトルがわかりやすいので選んでみました。
 The Elegant Other: Cross-cultural Encounters in Fashion and Art"
 原題の「麗しき」は英訳にはないのですが、代わりに"The Elegant Other"(「優雅なる他者」とでもいうのでしょうか)という文言が。横浜をゲートとし、〔外〕から入ってきたもの。そして〔外〕へと出ていったもの。こちら(日本)にもあちら(欧米)にも、海を隔てた相手へのあこがれ、麗しいなあ……真似たい、あんなふうになりたい、というまなざしがあった。ということを示唆しているのだと思います。

 チラシ、カタログの表紙、美術館の外に置かれた看板エトセトラに使われるこの図版は、
・ターナー〔イギリス〕デイ・ドレス/1872年頃/京都服飾文化研究所(以下KCI)蔵
です。 形はまごうことなきドレスですが、布の意匠や刺繍は和風ですよね。それもそのはず、このドレスは綸子の小袖をほどいてバッスルスタイルにしたものだそうです。
 西洋→日本という流れだけでなく、日本→西洋。そして、その両方があってこそ生れたドレスがキービジュアルになっているのも納得です。もちろん、このドレス自体のすばらしさ美しさがあってことだけれど。

 いただいたプレスリリースも参考にしつつ、個人的〔みどころ〕をあげると。
・ドレス美しい! 細部まで見るのが楽しい。

・横浜で生れ、海外へ出て行った工芸品も一緒に展示されていたりする。初代宮川香山の花瓶やカップ&ソーサー、芝山細工の屏風や飾棚(開港記念資料館で昨年開催された芝山漆器の展覧会紹介はこちら)……。
 特に、椎野正兵衛商店(S.SHOBEY)のドレッシングガウンが嬉しかった。2002年に四代目が再興したお店のものではありますが、わたしも何枚かスカーフ(&ちいさなバッグ)を持っているからです。→ ウェブサイトはこちらです。

2IMG_0537.jpg
・手前のケースに初代香山のカップ&ソーサー、衝立は芝山細工、手前と奥の女性用ドレスは椎野正兵衛商店の輸出用室内着(ギャラリートークでうかがった話ですが、現在の所有者のKCIが海外で購入し調べていたら、SHOBEYのタグが出てきてわかったとのことです)。
 このように、ドレスだけを展示するのではなく、「人がその事大空間に立ち現れているようにしたい」(ギャラリートークより)との狙いを具現化した展示も何場面かありました。

・絵画や版画などから、どのように「あちら」のものが受容されていったかうかがえる。
6IMG_6966.jpg
*左:月岡(大蘇)芳年 <<風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間 細君之風俗>> 1888年 KCI蔵
 右:月岡(大蘇)芳年 <<見立多似尽 洋行がしたい>> 1878年 KCI蔵
 右は全体で見ると着物姿なんだけど、その下にシャツ着てたり、模様がチェックだったり。楽しい。
 これを見て朔太郎の「ふらんすへ行きたしと思へどもふらんすはあまりに遠し/せめては新しき背広をきて/きままなる旅にいでてみん」を思い出しました。『純情小曲集』に入っている「旅上」の冒頭ね。1925年刊なのでだいぶあとのものではありますが……。

 では、ここからは写真+紹介(とコメント)で。
*このブログ記事に掲載した写真は、展覧会紹介記事に掲載するため特別の許可をえて撮影したものです。


・第1章 東西文化の交差点 YOKOHAMA
 上で紹介したS.SHOBEYのドレスなどもこの章です。
 
1IMG_6957.jpg
 日本製 輸出用ティー・ガウン〔リバティ商会取り扱い(推定)〕 1895年頃 KCI
 ラファエル前派の絵画を思わせる中世風のハンギング・スリーブのドレス。でも刺繍は菊。ピンクの色合いがきれいでした。

3IMG_6959.jpg
 左:日本製 輸出用イヴニング・コート 1903年頃 KCI
 右:飯田高島屋 輸出用イヴニング・コート KCI
 白(っぽい)地に白っぽい糸で刺繍ってぜいたくなおしゃれ。
 このどちらか(ぜひ現物を見てね!)に浜千鳥の意匠が用いられているのですが、デザイン化されてるし、西洋のひとは鳥だってわかったのかな? と考えながら見るのも楽しい、という内容の学芸員さんコメント。 


・第2章 日本 洋装の受容と広がり
*上で紹介した版画はこちらのセクションから。
 
4IMG_6964.jpg
 五姓田義松<<細川護成像>> 1887年 横浜美術館
 油絵+洋装の日本人を描いた一枚。渡欧時の肖像をあちらに留学していた画家に描かせたもの。

 このセクションに展示されていた鏑木清方の絵が美しかったし興味深いのですが、写真NGでした。
 外国の楽器でヴァイオリンがよく手にされているのは、持ち運びのたやすさももちろんあるだろうなあ。
 と、ついでに、〔朔太郎は日本で最初にマンドリンを演奏したひとのひとりであった〕というトリビアを思い出しました(またもや時代がぐっと下がるわけですが)。

7IMG_6969.jpg
 薔薇柄の着物とか帯とか。着物姿でも、帯にちょっと工夫するぐらいなら「許される」という感覚があったそうです。そこから徐々に大物(着物そのものとか)になっていくのね。
 右のぱっきりしたデザインの葵桐花文様の道行コート(KCI蔵。昭和初期)では、与謝野晶子の『みだれ髪』装丁を思い出したよ。1901年出版。

5IMG_0553.jpg
 髪飾りや指輪などの装身具も、横浜美術館では初めて展示するそうです。
 ハイジュエリーは現存するものが少ないそうです。戦争で金属を供出した時代を経ているし。

9IMG_0551.jpg
 そして圧巻の、
 日本製 昭憲皇太后着用大礼服(マントー・ド・クール) 1910年頃 共立女子大学博物館蔵
 トレーンの長さは3m30cmで、成人男性五人が持ったそうです。
 ベルベットのマント、ブロケードのドレス、菊の模様。菊は明治になって、皇室だけのものとなっていったそうです。

8IMG_6978.jpg
 別の角度から撮ってみました。
 絵画は
 グイード・モリナーリ<<正憲皇太后肖像>> 1897年 東京都庭園美術館
です。お隣には同じくモリナーリの手による<<明治天皇肖像>>。 
 
 横浜美術館、この展示室は一回廊下的スペースに出てからまた入る位置にあり、角度も工夫してある正方形で、「キメ」に使うときあるよね。篠山紀信の『写真力』では百恵ちゃんの写真がこの部屋にあったことを思い出しました。

第3章 西洋 ジャポニズムの流行

10IMG_0565.jpg
 キービジュアルのドレスも登場。
 この展示室、面白いです。入って右手には日本製テキスタイルのドレスが並び、

12IMG_6984.jpg

13IMG_6989.jpg
 手前:ドゥーセ(フランス) デイ・ドレス 1890年頃 KCI蔵
 奥: ドゥーセ(フランス) デイ・ドレス 1893年頃 KCI蔵

11IMG_0562.jpg
 左手には西洋製だけれどテキスタイルやデザインに日本文様が取り入れられているドレスが並びます。

14IMG_6985.jpg
 フランス製 ヴィジット(コート) 1890年頃 KCI蔵
さまざまな日本的「モチーフが絹糸で織り出された別布をコード刺繍でアップリケ」(カタログp.99より)。
 わかりやすい部分を大きめに写してみたつもりですが、わかりますか?

15IMG_0572.jpg
 アメリカ製シャトレーヌ(腰飾り)いろいろ。
 1880-90年頃 三菱一号館美術館蔵

16IMG_0574.jpg
 アシンメトリー(左右非対称)は「西洋には見られなかったもので、日本の美術・工芸品、あるいはきものから影響を受けたと思われる」(カタログp.100)
 ドゥーセ(フランス) デイ・ドレス 1897年頃 KCI蔵 

 きものの形は西欧(まずはパリ)のモードにも大きな影響を与えました。カタログから引用。

 20世紀初め、コルセットからの解放を願っていたパリ・ファッションは、きもののゆとりに目を向けた。女性を苦しめたコルセットはポール・ポワレによって流行遅れとされ、デザイナーたちはゆったりとした打掛を思わせるきもの風コートや、きもの風打合せ、帯風ベルトなど、きものに影響を受けたシルエットを発表した。抜き衣紋、裾を引いた着こなし、まゆ型(コクーン・シェイプ)など、こうしたスタイルは浮世絵に描かれたきもののイメージそのものだった。ファッション雑誌では女性たちが、コートを抜き衣紋で着こなし、お引きずりのように長い裾を引いている。振り返るポーズは、見返り美人さながらだった。
(カタログp.106)

17IMG_0602.jpg

18見返り美人

19IMG_7013.jpg
 エイミー・リンカー(フランス) イヴニング・コート 1913年頃 KCI

22IMG_6996.jpg
ジュール=ジョセフ・ルフェーヴル(フランス) <<ジャポネーズ(扇のことば)>> 1882年 クライスラー美術館蔵

23IMG_7029.jpg
チャールズ・ウェブスター・ホーソーン(アメリカ) <<キモノを着て坐る女性>> 1923年頃 クライスラー美術館蔵

24IMG_0592.jpg
 ここで突然?
 内覧会で話題沸騰だったトラキチてきコート。まるで羽織。虎ズちゃんとシンメトリーなのだよ(で、『クライングフリーマン』という古いマンガを思い出しました)。
 バンゴン夫人(フランス) コート 1924年頃 KCI蔵
 虎の柄をバティック染めしてるそうです。
 
20IMG_0603.jpg

20IMG_0607.jpg
 左:シャネル(フランス) イヴニング・コート 1927年頃 KCI蔵
「黒と緑のグラデーションの絹クレープに、金糸で菊文様を織り出している」とのこと(カタログp.124)。 
とても繊細。この質感、ぜひ実物を見てほしい。

21IMG_7038.jpg
 右:モリヌー(フランス) イヴニング・ドレス 1926年頃 KCI蔵
 菊文様の織り出し。図案化した菊も美しいしリズミカルだし、なにしろこの織りに触れてみたい。

 最後の陳列のテーマは「平面の発想」です。カタログから引用します。
 
 第一次世界大戦後、服には活動性や機能性が最重視されるようになり、現代の服へと大きく変貌を遂げた。ヴィオネは、きものから触発された新しいデザイン概念を結実させた。直線的、平面的なデザインを提案し、1920年代、ウェストを締めつけない長方形の筒型シルエットとなってファッションを牽引した。
 また、これら平面的な服の素材として使用されたのが、アール・デコ期の装飾美術界で注目されていた漆や蒔絵のデザインと質感を思わせるテキスタイルや日本的な柄だったことも、この時代の服と日本との繋がりを幾重にも湿している。

(カタログp.132) 

25IMG_0597.jpg

260IMG_7021.jpg
 右(上掲の記述に該当):マドレーヌ・ヴィオネ ウェディング・ドレス 1922年 KCI
 左:キャロ姉妹店(フランス):イヴニング・ドレス 1922年冬 KCI

 と、この展覧会を見て記事書いているうちに、むくむくと「新しい服がほしい」という気持ちになってきました。それも、布から選んだり……危険な衝動です! 今年は旅行の年だから誘惑に負けないようにしなければ。


[基本情報]
会   期:2017年4月15日(土)~6月25日(日)
会   場:横浜美術館
開館時間:10時~18時 (入館は17時30分まで)
      ※夜間開館:5月17日(水)は20時30分まで(入館は20時まで)
休 館 日:木曜日 (※ただし5月4日[木・祝]は開館)、5月8日(月)
主   催:横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
       公益財団法人京都服飾文化研究財団
       日本経済新聞社
後   援: 横浜市
特別協力: 株式会社ワコール、三菱一号館美術館
協   力: 日本宝飾クラフト学院、公益社団法人服飾文化研究会、みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
Comment(0) | Trackback(0) |  * 記事編集 *  go page top

* category: 展覧会

『これぞ暁斎!世界が認めたその画力』展@Bunkamura ザ・ミュージアム ブロガー内覧会に参加しました 

2017.03.26
Sun
16:51

 Bunkamuraザ・ミュージアムで4月16日まで開催中の『これぞ暁斎!世界が認めたその画力』展(公式サイトはこちら)。 美術館と古今東西の美術への深い愛にあふれるブログ「弐代目 青い日記帳」のtakさんがタッグを組んで開催されたブロガー特別内覧会に参加してきました。関係者のみなさま、すばらしい機会を与えてくださりありがとうございました。

 まずはチラシをご紹介。

IMG_5472.jpg
 モチーフになっているのは、<<地獄太夫と一休>>(明治4-22年)*1871-89年 です。画面左のなかほどで激しく踊ってるのが一休さん。その下には空の(皮を張ってない)三味線をつまびく骸骨が配されています。地獄太夫とは、一休が悟りに導いたとされる遊女だとか。

 この展覧会に行く前の暁斎のイメージはまさにこの絵。
 暁斎、わたしはこの二年ぐらいちょっと気になるひとでした。このブログで検索すると、昨年一月、山種美術館での内覧会『ゆかいな若冲、めでたい大観』の記事に、〔暁斎が好きみたい〕と書いています。今回のチラシに使われたものとは別のバージョンですが、上野の森で見た肉筆浮世絵展では一休さんと地獄太夫の絵が気に入ったようです。また、山種美術館で見たこのに通じるのはこの赤かな。というわけで、ギャラリートークつきの内覧会に喜んで参加してきました。

 で、今回学んだ、というか、覚えておこう! と思ったのは、
・暁斎は幕末~明治の時代を生きた人。1831年生れ、1889年没。
・ジョサイア・コンドー(「コンドル」という表記がおなじみ)なども弟子だった、幕末~明治における国際人のひとり。
・浮世絵は国芳のもとで学んだ。←当時8~9歳だったけど!
・国芳は猫、暁斎は蛙や烏。でも猫たくさんあった♪
・狩野派のもとで研鑽を積んだたしかな技量の持ち主。
・ジャンルもテーマもとにかく多彩。幽霊画、春画……中国絵画にしか見えない絵も描く。
・作品のムードもいろいろ。シリアスなものから笑える、風刺も。

 いくら特別に撮影を許可されたといってもオリジナルの筆致に及ぶべくもありません。16日までですからぜひ急いでザ・ミュージアムへ!

 ……と言いつつ、印象に残った&まあまあちゃんと撮れたかな、な絵をすこしご紹介します。

 *このブログ記事に掲載した写真は、展覧会紹介記事に掲載するため特別の許可をえて撮影したものです。
 
IMG_5442.jpg
・左 <<烏瓜に二羽の鴉>> 明治4-22(1871-89)年 ゴールドマンコレクション
・右 <<蔦絡む枯木に鴉>>明治4-22(1871-99)年 ゴールドマンコレクション
 二つ目の展示空間はコを左右反転した形で、ずらっと鴉の絵が並んでいました。その数なんと14枚。1881年に第二回内国勧業博覧会に出品した鴉の絵が事実上の最高賞を獲得した(そしてものすごい値段で売れた)ことから、暁斎には鴉の絵の注文が押し寄せ、それに応えてたくさん描いたそうです。ゴールドマンさんも30枚ほど所有してるとのこと。
 一言で鴉と言ってもポーズはいろいろだし、描き方もいろいろ。その中から赤も入ってる絵の並びをピックアップしてみました。

IMG_5445.jpg
 鍾馗さんの絵を並びで三枚。
・左 <<鍾馗と鬼>> 明治15 (1882)年 ゴールドマンコレクション
・中央 <<鬼を持ち上げる鍾馗>> 明治4-22(1871-89)年 ゴールドマンコレクション
・右 <<鍾馗と鬼>> 明治4-22(1871089)年 ゴールドマンコレクション
 第4章の「戯れる-福と笑いをもたらす守り神」には、この鍾馗さんのほかにも七福神の絵など。鍾馗さんは守り神として端午の節句に飾ることが多く、注文もたくさん受けただろうとのこと。

 さっきの三枚はいわば「まじめ」にお務めを果たしている鍾馗さんですが、直角に位置する隣のケースに並ぶ鍾馗絵では、鬼を崖から吊るしてたり、鬼同士で相撲を取らせたり、鍾馗さんイコール正義の味方とも言えないような絵も。
 その中から一枚。画面構成、鍾馗さんの姿勢、服の表現など、これは! と思った一枚です。

IMG_5466.jpg
・<<鬼を蹴り上げる鍾馗>> 明治4-22(1871-89)年 ゴールドマンコレクション

・猫ポインツも高いのよ! の巻。
 お師匠さんだった国芳ほどじゃない……にしても、猫いろんなところに登場してました。

 最初のセクション、「出会い-ゴールドマン コレクションの始まり」より、
IMG_5450.jpg
・<<鯰の船に乗る猫>> 明治4-12(1871-1879)年 ゴールドマンコレクション
 ひっくり返って船に見立てられた鯰の腹に、しんなりと腹這いになって運ばれていく着物姿の猫。猫は遊女をあらわすこともあるそうです。

IMG_5452.jpg
・<<鯰の引き物を引く猫たち>> 明治4-22(1871-89)年 ゴールドマンコレクション
 この猫たちは直立歩行で、体のバランスもまるで人間。

「第2章 躍動するいのち-動物たちの世界」
 一枚絵としてはこの猫が一番好きでした。
IMG_5456.jpg
・<<眠る猫に蝶>> 明治4-22(1871-89年) ゴールドマンコレクション
 輪郭線を使わず、ほんわりした猫のやわらかい毛を表現。香箱座りしてどんな夢を見てるのかな。 

20170323192326_IMG_0118.jpg
・『暁斎画談』 明治20(1887)年 ゴールドマンコレクション
 の、猫の見開き! 右側はかなりもっさーですね。

 ギャラリートークで、「あなたの一枚を紹介してください」という主旨の呼びかけがあったんですが、地獄太夫と一休さんか、それとも鬼を蹴り上げる鍾馗さんか。

 いや、思いがけない出会いの一枚を!
 あまり大きくない一枚(A4ぐらい? 作品一覧にサイズがない……)なのですが、この
20170323192451_IMG_0124.jpg
・左 <<雨中さぎ>> 制作年不祥 ゴールドマンコレクション
・右上 <<松に猿>> 明治17(1884)年 ゴールドマンコレクション
・右下 <<眠る猫>> 明治18-22(1885-89)年 ゴールドマンコレクション
を見たときに、
「あっ? えっ!?」
となりました(ちょっとぐらい声出てたかも)。

IMG_5443.jpg
 この<<雨中さぎ>>にものすごい見覚えが……。
 いまを去ることxx年前、めでたく定職に着くことが決まり、ささやかですが自分のスペースももらえるとなって、なにか飾ろう、と、いま思えばちょっと不思議なのですが、元町の酒井考古堂さんで版画を見て選んだのがまさにこの絵、だと思う。この雨の表現、黒と白のコントラスト、デザイン化された鷺の姿。
 誰の作かとか気にしてなかったし、記憶の彼方に仕舞ってあったのですが、今回の展覧会で思わぬ再会となりました。
 あれから何枚か絵画や版画を買いましたが(ほんとに「何枚か」ですけど)、絵はがきやポスターから一歩踏み出したものとしては、たぶんこの「雨中さぎ」がわたしの最初の一枚だったんだろうな。

・・・・・・・・・・
<開催概要>
開催期間:2017/2/23(木)-4/16(日)  ※会期中無休
開館時間:10:00-19:00(入館は18:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
主催:Bunkamura、フジテレビジョン、東京新聞
協賛・協力等:
[協賛]花王、わかさ生活、チクブパッケージシステム
[後援]ニッポン放送、ブリティッシュ・カウンシル、日仏会館フランス事務所
[協力]日本航空、さとふる
お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
Comment(0) | Trackback(0) |  * 記事編集 *  go page top

* category: 展覧会

『オルセーのナビ派』展@三菱一号館美術館 ブロガー内覧会に行ってきました 

2017.02.17
Fri
12:14

 とうとう開催! 日本初、いや世界でもなかなか類を見ない、ナビ派の全貌を紹介する企画展が三菱一号館美術館で5月21日まで開催中です。わたしはナビ派大好きで、展覧会企画に関係する仕事をしてる友人に五年前ぐらいに「やってほしいなー」なんて言ってみたこともあるので余計に嬉しい(「なかなか難しい……」という返事でした)。

 2月9日(木)に開催されたブロガー内覧会にありがたいことに当選し(かなり倍率高かったとのこと)、喜んで行ってきました。関係者のみなさま、すばらしい機会を与えてくださりありがとうございました。

 もちろんまた行くつもりです。みなさまにもお薦めです! 装飾美術としての側面も強く、家具などとの親和性も高いナビ派は、暖炉なども活かした展示室を持つ三菱一号館美術館にはよく似合っています。オルセーからは油彩約70点、素描約10点などが来日。

 →三菱一号館美術館による展覧会ページはこちら
 オルセー美術館公式サイトの英語ページトップはこちらです。  
 ついでに、Google Arts & Culture上の「ナビ派」はこちら
  
 
DSC_4877.jpg
 まずはチラシと、展覧会カタログ。どちらもボナールの絵が使われています。
 今回の展覧会にもたくさん来ていたのですが、著作権の問題があるのでSNSにアップするのは控えたほうがいいというアドバイスがあり……興味をもたれたかたは、ぜひ上で紹介した展覧会サイトなどでごらんください。もちろん、美術館に行ってみる! のが一番ですが♪

 IMG_4786.jpg
 カタログ表紙は充実の二種。じつは赤はこの展覧会実現に多大な協力をしてくださったオルセーおよびオランジュリー美術館の総裁ギ・コジュヴァル氏おすすめだったかな。ヴュイヤールの<エッセル家旧蔵の朝食>を使用した限定部数カタログです(でもわたしは緑が好き&ボナール好きなので緑買ってしまいましたが)。

 それでは、展示についてちょっとご紹介します。
*会場内の画像は主催者の特別の許可を得て撮影したものです。

IMG_4799.jpg
・ポール・セリュジエ<ナビに扮したポール・ランソン> 
 1890年 油彩/カンバス
 オルセー美術館蔵

「ナビ」Nabiというのは、ヘブライ語で「預言者」という意味。だからこの絵のなかのランソン(ナビ派メンバーのひとり)も、五芒星をかたどった杖や異教的雰囲気のガウンなど、エキゾチックで神秘的な格好(コスプレ的な♪)をしています。でもなにを「預言」するの?

↑三菱一号館美術館で配布中の見どころガイドから引用してみます。
「ナビ派は19世紀末のパリで、ゴーガンの美学から影響を受けて結成された、前衛的な若き芸術家グループです。『ナビ』とはヘブライ語で『預言者』を意味し、彼らは自らを新たな美の『預言者』と称したのでした。ナビ派の代表的な作家には、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、セリュジェ、ランソンなどがあげられ、当館で2014年に展覧会を開催したヴァロットンもその1人です」

 そうなのです、ナビ派の成り立ちにはあのゴーガン(あの、っていうのは、昨年『ゴッホとゴーギャン』展で突然、雷に打たれたように、「あっ、わたしゴーギャン好きだった!」と気づいたので。タヒチ以前のゴーガンが好きです)が深く関わっていたのです。
 だから第一室にはゴーガンの絵も展示されています。

IMG_4760.jpg
・ポール・ゴーガン<<<黄色いキリスト>>のある自画像>
 1890-91年 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

IMG_4761.jpg
・ポール・ゴーガン<扇のある静物>
 1899年頃 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

 ゴーガンとともに総合主義を確立した、エミール・べルナールの作品も展示中。
IMG_4764.jpg
・エミール・べルナール<ブルターニュの女性たち>
 1888年頃 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

 わたしにとってもっとも印象深いのは、モーリス・ドニのこの作品。

IMG_4776.jpg
・モーリス・ドニ<ミューズたち>
 1893年 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

 オルセーに初めて行ったのは、1980年代末なんじゃないかと思います。パリに二度目に行ったとき。
 ルドンの絵が見たくて行ったのですが、そのすぐ近くの展示室にあったのがこの作品。で、これはわたしの記憶ではそうなっている、というだけで、まあ夢かもしれないのですが、この絵の樹木を意識した柱(という装飾)がすぐ近くにあって、おもしろい展示だなあと思ったのでした。それから、今回も来ているヴァロットンの<ボール>がすごく好きで、この二枚は絵はがきを買ったのを覚えています。

 自分にとってナビ派が〔けっこうメジャー〕だったのは、国立西洋美術館のおかげもあります。西洋美術館のウェブサイトで作品検索をしてみると、ボナールが3点、ドニが49点(!)、セリュジェ2点、ランソン1点、マイヨール9点(彫刻が中心)を収蔵しています。今回のギャラリートークでも、松方コレクションの松方さんが[現代画家]としてドニを多く買ったこと、そして現在三菱一号館美術館の館長をつとめる高橋さんも、西洋美術館在職中にナビ派の作品を購入したとも話しておられました。
 
 さらに、ここでは紹介できないのが残念なんですが、猫ポイントの高い画家としてボナールが好きなんですねー。最初にあげてあるチラシに使われている<格子柄のブラウス>では女性が白黒の猫をがっしり抱いているし、その名も<猫と女性>という、白猫がみょーんと伸びてる絵も今回展示されています。

 けれどもナビ派は、本場フランスでも最近やっと再評価されつつあるそうです。その先頭に立っているのがオルセーの館長を2008年から務めるコジュヴァル館長 で、専門はヴュイヤール。オルセーのコレクションも増やし、ナッシュビル(USA)の大富豪が所蔵していた600~700点のナビ派作品をオルセーに寄贈させた立役者でもあり、今年3月の任期満了退任後は、新設のナビ派センターに異動されるとのこと。

 展覧会は6部構成です。

1 ゴーガンの革命

2 庭の女性たち

 カタログp.53から引用します。
「女性と自然の組み合わせは、19世紀末の象徴主義の主要なテーマの一つであった。ドニやボナールの作品に見られる、女性の身体のラインに巻きつくような植物の表現は、ある特定の風景ではなく、想像上の庭園や様式化された公園を描き出している」

 このセクションのハイライトは、セクション名ともなったボナールの連作<庭の女性たち>でしょう。女性・植物・さらに猫や犬も登場する四枚の装飾パネルは、展覧会サイトの「みどころ」で見ることもできます。
 また、カタログ(緑)に使用された<黄昏(クロッケーの試合)>もこのセクションに。「格子模様の衣服の平坦さと画面の装飾性も特筆すべきであろう」(カタログp.65)という指摘もありますが、カタログ表紙でちょうど中心に配置されているのでご確認いただければ。
 わりあい控え目サイズの多いナビ派ですが、<庭の女性たち>も<黄昏>もかなり大きく(<黄昏>は130.5X162.2cm)、庭園の緑に包まれるような感興も味わうことができて、ぜひ実物の前に立ってもう一度見たいなと思っています。

 ここでは、ドニの作品を二枚。

IMG_4769.jpg
・モーリス・ドニ<9月の宵、若い娘の寝室装飾のためのパネル>
 1891年 油彩/カンヴァス 
 オルセー美術館蔵

IMG_4770.jpg
・モーリス・ドニ<10月の宵、若い娘の寝室装飾のためのパネル>
 1891年 油彩/カンヴァス 
 オルセー美術館蔵

 さらにマイヨール。
IMG_4771.jpg
・アリスティド・マイヨール<女性の横顔>
1896年頃 油彩/カンヴァス 
 オルセー美術館蔵
 あまりものを多く配置せず、空間を活かした作品で目立っていました。

3 親密さの詩情
<親密さ>、アンティミスムってナビ派のキーワードのひとつ。このセクションについて、カタログp.73から引用します。
「その初期の展覧会以来、ナビ派は、ある私的な世界をまるで覗き見ているかのように描いた、室内の上掲の優美さと力強さによって評価をえた。登場人物たちの間の緊張感は、画面構成の工夫や光と影の対比によって軽妙に表現されている」
 
 このセクションは、かつて三菱一号館美術館で展覧会が開催されたヴァロットンの作品の存在感が強くなっています。
 で、じつはけっこう恐い。というか不穏。
 うまく写真が撮れなかったのですが、ヴァロットンの<室内、戸棚を探る青い服の女性>は、水色に近い青の寝間着を着た女性の後ろ姿が中心要素なのですが、寝起きなのか髪は乱れているし、戸棚の下のほうを見ているのか頭が斜め下に向けて落ちているし、なにか幽霊めいた雰囲気がある。戸棚のなかでなにを「探」っているの? 

 高橋館長のギャラリートークでとくに心に残ったのは、ナビ派の〔ある種の二重性〕でした。ナビ派はかわいい感じがするけれども(じっさい、高橋さんは学芸員の杉山さんと共著で『かわいいナビ派』という本を上梓されてますが)、その日常性やかわいさの裏にあやしいかげがあると。ヴァロットンの<ボール>の女の子を追いかけているかのような木の影は、自然ならばあんな形にはならないし、ほかの絵でもわけのわからない影がついていたりもする。ボナールの裸婦画<ベッドでまどろむ女(ものうげな女)>もそうした作品のひとつとのこと。

4 心のうちの言葉
 肖像画を中心としたセクション。
 
IMG_4777.jpg
・エドゥアール・ヴュイヤール<八角形の自画像>
 1890年頃 油彩/厚紙
 オルセー美術館蔵

 先鋭的!
 わたしはフォービスムや表現主義も好きなのですが、ここでつよく「つながってる!」と思いました。しかもカタログによると、
「八角形をしたこの珍しい自画像は、絵画を再現描写的な氏名から解放しようとした画家の意志を物語っている。形態と色彩を極度に純化したその急進性は、ゴーガンやファン・ゴッホに匹敵するのみならず、フォーヴの画家たちの大胆さを15年も先取りしている」(p.97)

 この絵と同じ展示室に、おだやかだけれど真摯なドニの自画像も展示されています。
IMG_4778.jpg
・モーリス・ドニ<18歳の画家の肖像>
 1889年 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

(この色の構成、なんだかベルト・モリゾ<ゆりかご>を思い出したのですが、改めて見比べると特に似てなかった。カーテンと日差しかな)

 前述のボナールの猫登場絵もこちらです。大作<ブルジョワ家庭の午後>にも、右下にちょっとへんてこな形の-「あれっ、ジュリー・マネちゃんとこの猫?」って思った-猫がいますのでお好きな方は要チェックや。

5 子ども時代
 
 奥に見えているのは、
IMG_4787.jpg
・モーリス・ドニ<窓辺の母子像>
 1899年 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

 ドニは聖家族的な趣のある<メルリオ一家>を、去年見たカサットの<家族>と並べてみたい。奥に森へと続く道があるのが共通点。

 ヴュイヤールの装飾画連作
IMG_4792.jpg
・エドゥアール・ヴュイヤール<公園>より、左から
 <公園 戯れる少女たち> 1894年 油彩/カンヴァス
 <公園 質問> 1894年 油彩/カンヴァス
 <公園 子守> 1894年 デトランプ/カンヴァス
 <公園 会話> 1894年 デトランプ/カンヴァス

 ナタンソンの注文で描かれた連作のうち5点がオルセー収蔵で、今回来日。オルセーでは一線に並べて展示してあるけれども、もともとの意図に沿ったコ型の配置ができているのも、三菱一号館美術館という場所を活かした展示だそうです。
 
6 裏側の世界
 さきほどもギャラリートークから引用しましたが、ナビ派の作品の「ある種の二重性」、かわいさや日常性の裏に不安や違和感が潜む多義性がフィーチャーされたのがこの最後の展示室。
 今回の展覧会で、個人的には一番惹かれたセクションです。「かわいい」(猫含む)から好き、色彩が好きだからと思っていたナビ派ですが、こうしてさまざまな面から光を当てられると、「あっ、そうか。ルドンや象徴主義、それから表現主義、フォーブなど、ほかの〔好き〕といういう地続きだったんだ」と、すごく腑に落ちる体験をしました。

IMG_4802.jpg
・モーリス・ドニ
 上・<プシュケの物語 プシュケの誘拐(第2ヴァージョン)> 1909年 油彩/カンヴァス
 下段右・<プシュケの物語 プシュケと出会うアモル> 1907年 油彩/カンヴァス
 下段中央・<プシュケの物語 プシュケの好奇心> 1907年 油彩/カンヴァス
 下段左・<プシュケの物語 プシュケの誘拐> 1907年 油彩/カンヴァス
 すべてオルセー美術館蔵

IMG_4795.jpg
・エドゥアール・ヴュイヤール<ベッドにて>
 1891年 油彩/カンヴァス
 オルセー美術館蔵

 そして、「黒い」要素が全面に出てるこの二作が隣り合っているのもいいよね。
IMG_4798.jpg
 左・ジョルジュ・ラコンブ<存在> (部分)
   1894-96年 クルミに浅浮彫 オルセー美術館蔵
 右・ポール・ランソン<黒猫と魔女>
   1893年 油彩/カンヴァス オルセー美術館蔵

 楽しく、わくわくし、ちょっとだけ不穏……すばらしい体験ができました。
 ぜひ再訪したいと思います。もちろん、いつか、ナビ派センターにも行きたい!
 
 
〔開催概要〕
『オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき』
会期     2017年2月4日(土)~5月21日(日)
開館時間 10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
       ※入館は閉館の30分前まで
休館日  月曜休館(但し、2017年3月20日、5月1日、15日は開館)
主催    三菱一号館美術館、読売新聞社、オルセー美術館
後援    在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)




Comment(0) | Trackback(0) |  * 記事編集 *  go page top

ブログ内検索

最近の記事

カレンダー

カテゴリー

リンク

最近のコメント

プロフィール

最近のトラックバック

RSSフィード