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* category: 記録

昭和二十七年のノート 

2011.05.05
Thu
00:06

 母の押し入れ整理を手伝っていたら、出るわ出るわ
「きれいだから」
と取っておいたという空き箱が。
 
[有田焼]
という箱書きのあるちょっと古い紙箱を手に取ってみたら、なんだかかさかさ音がします。
 明けてみたら、モノクロの写真が二十枚ばかり。しかもほとんどが歌舞伎の舞台写真とかブロマイドでした。
 全部にじゃないけど、裏に
「昭和二十九年 七月興業 歌舞伎座
 吉右衛門一座
『一本刀土俵入』
 船印彫師辰三郎 勘弥」
なんて書いてあるのです。

 なんだか楽しい!
 ので、借りてきました。

 20110504.jpg

 写真に混じって、小振りなノートが出てきました。
 その名も
「映画 演劇 その他
 昭和二十七年
 (母の名) (年齢)」
だそうで、一月から十二月まで、なにを・どこで・誰と見た。+出演者などがきっちり書かれていました。

 七月を例にとってみます。

・”美女ありき”     七日
 イギリス映画 東宝系 横宝
 エマ ハミルトン    ヴィヴィアン・リイ
 ネルソン        ローレンス・オリヴィエ
 ハミルトン       アラン・モウブレイ
 ネルソン夫人      グラディス・クーバー
 ハーディ艦長      ヘンリイ・ウィルコクスン
    監督       アレキサンダー・コルダ

・新派七月興業 河合武雄追悼公演    十二日
 昼ノ部      明治座
 ・(演目・出演者・誰と、などは略)

・”野球” 「毎日-大映」       二十五日
               平和球場
  延長・毎日勝
   -義兄さん・(妹)と-

・”海”  鎌倉由比ヶ浜        二十七日
  Aさんの御宅へ    Bさん、Cさんに会う。
  帰宅 十時半
   -Dさんと-

・”薪能”               二十八日
   観世流    於明治神宮
  (ここだけメモがいいかげんで、演目・出演者は書きかけで止めてあります)
  -兄・(妹)と-


 妙にまじめに、巻末に「一年間計」もありました。

・映画
  二十四回 三十二本   邦画 二十本  洋画 十二本

・演劇
 一.歌舞伎  五回  昼ノ部 三回  夜ノ部 二回
    吉一座三回・菊二回
 一.新派   一回   (昼ノ部)
 一.松竹歌劇 一回
 一.能(薪能)一回
   計 八回(明治座 歌舞伎座 各三回  国際一回)
 
・野球
  二回      プロ一回 都市対抗一回
        平和球場一回 後楽園一回
  他 高校野球 二回(平和球場)

・旅行
  一泊旅行 二回(熱海・湯河原)
  日帰り  二回(鎌倉方面・明治神宮他)


 それにしてもよく遊んでるなあ。
 そして、きちんとつけられた秘訣は、案外[ぜんぜん感想とか書かない]なのかもしれないなあ、と思いながら眺めました。わたしは[ちゃんと(包括的に)書こうとして、結果的に挫折]タイプなので。

 母の記憶はそうとうあやしくなってきてますが、かつて好きだった役者の名前はすぐに出てきました。
 今回一番上にして撮った役者の名前は「大谷友右衛門」。ピンの写真が多かったからです。
 歌舞伎っぽい名前だけど(写真もそういう感じ)、吉右衛門とか団十郎、松緑なんかと違ってわたしにはぜんぜんぴんとこない名前だなあ。と思って、調べてみました。

 ・・・・・・すみません。歌舞伎あんまり見ないんですっかり忘れてました。
 この人は当代(四世)中村雀右衛門でした。その名前なら知ってるよー。
 検索して公式サイト(こちら)を見つけ、かつて日経に掲載された「私の履歴書」転載を読んだりして、なかなか勉強になりました。
 雀右衛門という人は女形ですが、この写真は映画に出ていたころのもの。佐々木小次郎が当たり役だったそうです。

 前に引っ越しをしたときにずいぶん整理してしまったので、類似のものはもう出てこないかもしれません。
 若いころの母の細くてきれいな筆跡を眺めるためにも、この箱はぜひとっておいてもらおうと思います。
 
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この記事に対するコメント

なんてすてき!
あの可憐なお母様がさらに可憐でいらした時の宝箱ですね。
タイムカプセルでもありますね。
明日(今日)私も老母と老父をようやく訪ねてまいります。
彼女にこんな楽しい思い出はあったかしら。
映画や歌舞伎が大好きだったのは
共通かもしれません。
私が思い出せたら、老母にも中村雀右衛門のこと聞いてみます。
【2011/05/05 00:15】URL | シュール・リー #oyD4ODho *編集*

リーさん、こんにちは! コメントありがとうございます。

ご両親さま休日、楽しんでらっしゃる頃でしょうか。
わたしは昨日、母の押し入れ手伝いでがんばりすぎてしまったので、今日はのんびりムードです。
雀右衛門さんの「わたしの履歴書」、おもしろかったです。もともと一族の名前ではなかった「雀右衛門」の名跡を継いだ理由なども時代を感じました。

それにしてもうちの母まで偶然お目にかけてしまって、ちとお恥ずかしい。
可憐だなどと、恐縮であります。
【2011/05/05 13:19】URL | かんべえ #z7XDr28E *編集*
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