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* thread: 美術館・博物館 展示めぐり。  * genre: 学問・文化・芸術

* category: 展覧会

ゴヤをめぐって 

2011.10.25
Tue
01:10

 10月22日~2012年1月29日上野の西洋美術館で開催のゴヤ展、内覧に行ってきました。いつものことながら友よありがとう。

 フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス Francisco de Goya y Lucientes (1746-1828)は、スペイン古典絵画の三大巨匠のひとりです(ベスト3好きな日本人が考えた名称かもしれません。残りふたりはベラスケスとエル・グレコです。エル・グレコは「スペイン人」ではないですが)。

 スペイン国立プラド美術館から借りてきた72点の油彩、素描などを中心に、国立西洋美術館など国内にある版画約50点を加えた、合計120点あまりが展示されています。日本では40年ぶりの大規模なゴヤ展だそうです。

〔目玉〕は「着衣のマハ」。
goyagoya.jpg
 チラシなどにももちろん使われています。
 マハ majaというのは当時の「伊達女」のこと。「裸のマハ」はマドリッドでお留守番です。でもカタログには特別出演してますよ。

 プラド美術館サイト(こちら。日本語もあります)にも、この展覧会についての記事が載りました。ちゃんとなにが出ているかも書いてあるなあ。ていねいです。そして展覧会の説明では、テーマや思想、当時の社会状況との関連についてはもちろんですが、油彩・素描・版画という複数のメディアを使いこなしたゴヤの卓抜したテクニックにも注目してほしい、という点が目を引きました。

〔日本に行っているよ〕ということで画像つきで紹介されているのは、
・1815年作「自画像」。展覧会の最初のセクションを飾る作品でもあります。
・「魔女の飛翔」
でした。ついでに、プラドのサイトには「1時間(しかないとき見るべき15点)」「2時間(30点)」「3時間(50点)」という紹介があるんですが、ゴヤの作品は

・[1時間]→「1808年5月3日、あるいはプリンシペ・ピオ山における銃殺」1814年作(こちら)
・[2時間]→プラス「裸のマハ」1795-1800年作(こちら)
・[3時間]→プラス「カルロス四世家族」1800年作(こちら)および「我が子を食らうサトゥルヌス」1820-1823年作(こちら)
でした。4作品はもちろん最多で、ほかにベラスケスが4作あげられているだけです。

 の、わりにはゴヤの肖像はプラド美術館のちょっと裏にある・・・
prado2008goya.jpg
 美術館の正面まんなかにあるのはベラスケスの肖像です。

 さて、今回の展覧会の話に戻りましょう。
 西洋美術館の地下に降り、まぶしいほどの赤と黒の「ゴヤ展」オープニングに迎えられると、すぐに階段でさらに下に降りるというおもしろい導線です。
 階段をおり、右折すると迎えてくれるのはボルドー色の壁面。自画像のなかのゴヤが着ているスモックから取ったのでしょうか。

 次のセクションは明るい色彩にあふれた絵が並びます。タピスリーの原画(カルトン)です。
 ゴヤは1775年に王立タピスリー工場の仕事をはじめ、原画を描きます。「日傘」(タピスリー用原画の代表作)や「洗濯女たち」などの、民衆生活に取材したあかるい色彩の大判の絵が並びますが、じつはここにもゴヤの鋭い目が見たものが反映されているそうです。
 たとえば、「日傘」の男女。前景で着飾る女はフランス風のいでたち。後ろから女に日傘をさしかける男は「マホ」、つまりスペイン(マドリッド)の下町の伊達男。両者の階級差、そして決して交わらない視線の行方。
 ふつうに「きれいだな」と眺め、まあ素通りしていた絵でしたが、そのように絵解きをされるとがらっと印象が変わりました。

 さてさて、「猫の喧嘩」もこちらに含まれます。
gatosG.jpg
 絵はがきはもちろん、大小のクリアファイルほかのグッズも作られている今回の稼ぎ頭(もちろん、猫げぼくワールドにおいてです)。猫げぼくのみなさま、こちらは今回の展覧会でごらんになることをお勧めします。

 なぜって、わたしの記憶に間違いがなければ、この絵の定位置は展示室上方、ほかの絵の上で、こんな真っ正面のアイレベルから見れることはまずないからです。
 カタログにも
「幅の狭い横長の形状と、下から上を見上げる視線は、扉かバルコニーの上の高い場所に飾ることを想定したものである」
とあります。
 プラド美術館ではパッケージにこの絵をあしらったラング・ド・シャチョコを販売しているので今回もあるかな? と思ったら、残念ながらありませんでした。コラボスイーツはカカオ・サンパカでありました。 

 話題はずれますが、この展覧会、けっこう猫&猫科に出会えます。もちろんこの「猫の喧嘩」が真打ちでありますが。後半の素描にもありますので、「猫はどこ?」をやるのもいいんじゃないかと思います。

 今度は階段を上り、女性を描いた作品のセクションへ。こちらに「着衣のマハ」があります。
 じつはこの絵ばかりが頭にあったころは、ゴヤってすごいなとは思っていませんでした。
 時の宰相(で、王妃の愛人)ゴドイの屋敷にあったとか、着衣のと裸のが背中合わせになってたとか、それまで女性の裸は神話などの「口実」なしには描けなかったのにここではとか、なんかエピソード先行で、衣服の表現などはいいと思いましたが、肝心の人物の表情があんまり・・・と思っていたのでした。

 でもそれは、いろいろと作品を見るうちに修正されていきます。
 この展覧会では「レオカディア・ソリーリャ(?)」など、モデルの人柄や精神状態までつかみ取ってキャンバスに描き出してしまう手腕には惚れました。

 今回は来日していませんが、この作品なんか好きです。
なかよし親子

 また、近年ようやく脚光を浴び始めたゴヤの宗教画についても、やさしい表情の「無原罪のお宿り」や「荒野の若き洗礼者ヨハネ」などの油彩画が展示されています。
 ゴヤは宗教画の注文をわたって受けており、かつ(カタログによると)「それは収入という面においても、ゴヤの画業において2番目に大きな比重を占めていた」とのことです(1番目は肖像画かな)。

 これは今回下絵が展示されていた「聖フスタと聖ルフィーナ」の本作。
goyaSevilla.jpg
 ゴヤに注文を出した、セビーリャの大聖堂で撮りました。

 この展覧会、まじめに見るとかなりヘビーです。
 素描や版画が多いので小さめの作品が多い→作品数が多いこと。もその理由ですが、
『ロス・カプリーチョス』、『妄』、『戦争の惨禍』などの作品が描きあばきだす暴力、無慈悲、堕落などが、見ているうちにすこしずつ胸のうちに積み重なっていくからです。そして、ゴヤの時代から約三世紀が経とうとしているのに人間のすることってあんまり変わらない、というかさらに悪くなっているかもしれない、という現代性、同時代性に、暗澹たる気持ちになっていくからです。

 結局わたしも、絵そのものではなく背後の「エピソード」を読んでいるのかな。
 ともかく、自分にとって忘れられない展覧会になることは確かです。

・・・・・
 おまけ。
・「ウィリアム・ブレイク版画展」も同時開催です。ずーん、どーんとぶつけて、ほかの美術館に行く気力体力を奪う作戦か西美よ。
・最後のほうがやっぱり暗いので、〆に「ボルドーのミルク売り娘」あたりあると最後にちょっと浮上してよかったんではないかなー。と、嬉しいことに偶然会えた友人(主催者側)に言ってみたら、この展覧会の担当キュレーターさんは「あれはゴヤの作品に非ず」派なのだそうです。だから当然「ゴヤ展」には貸してもらえなかったらしい・・・。
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この記事に対するコメント
興味の尽きない「ゴヤ展」です。
「日傘の女」の女性がフランスの衣装だとは知りませんでした。
「ボルドーのミルク売り娘」はゴヤの作品ではないかもしれないのですか。
そうだとすれば残念なことです。
かんべえさんの記事を私のblogで紹介させていただきました。
【2011/10/25 06:56】URL | chariot(猫アリーナ) #/8nqih4Y *編集*

chariotさん、こんばんは。

ブログでの記事紹介ありがとうございます。
ほんとうは後半の壮絶な素描や版画もちゃんと紹介したかったのですが、
力尽きました。
chariotさんが紹介しておられた、女性が大砲によりかかっているものは
わたしも好きです。

「ボルドーのミルク売り娘」の件ですが、調べてみると、
以前話題になった「巨人」(弟子、または追随者の作と発表)と一緒に
「ゴヤではない」とされたそうです。
ただし、日本でも大きくとりあげられた「巨人」とは違い、こちらについては
かなり異論も出ているとのことです。
ちょっとさびしいですね。
【2011/10/25 19:54】URL | かんべえ #Z2xPojP6 *編集*

こんばんは

ゴヤも猫描いていたのですね。知らなかったです。わが子を喰うなんとか(名前覚えていない)。。。って絵が怖いです。
あ、ゴヤではないかも、その絵。
モディリアニ(も、演じたGフイリップも大好きです)の妻ジャンヌ(Aエーメも好き。いしだあゆみ、佐藤友美さんは影響受けていますね)の絵でギリシャ?旅行中、テーブルそばに黒猫の絵が。。。その後の悲劇を暗示するような。
【2011/10/26 21:00】URL | suzielily #4ph23zis *編集*

suzielilyさん、こんばんは。

コメントありがとうございました。
「我が子を食らうサトゥルヌス」、プラド美術館が選ぶ傑作(3時間あったら見るべきの部)にも入っています。
リンク貼ってありますので、よろしければ・・・。

美術館では猫絵を探すのが常ですが、あんまりないです
(犬みたいにたくさんあると切りがないので、それもまたよしですが)。
ジャンヌの絵、教えてくださってありがとうございました。
検索してみました。


【2011/10/29 19:51】URL | かんべえ #z7XDr28E *編集*
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